日本の労働法

2026

この記事の内容:

労働時間管理の義務とは?

従業員の労働時間を適正に管理し、その権利を保護するとともに、労働に対する公正な対価を保証することを目的として、労働基準法をはじめとする関係法令があります。これは企業の形態を問わず、労働者の不当な取り扱いや過重労働を防止し、健全な労使関係を維持するための法的基盤です。

雇用主は全従業員の労働時間を客観的な記録で把握する義務があります。自己申告だけでなく、タイムカードやICカード、PCのログなど厚生労働省のガイドラインに基づく客観的な記録が必要です。従わない場合は罰則やブラック企業として公表される大きなリスクがあります。

  • 客観的な労働時間の把握をする
  • 労働時間の記録を5年間(当面の間は3年)保存する
  • 違反すると罰金や付加金
  • 労働基準監督署による是正勧告を受ける恐れ
  • 厚生労働省による企業名公表のリスク

原則として「1日8時間、1週間で40時間」が上限ですが、例外として業種や働き方の実態に合わせた以下の5つの大きな特例が認められています。

  • 変形労働時間制(労働基準法 第32条の2~5)
  • フレックスタイム制(労働基準法 第32条の3)
  • みなし労働時間制(労働基準法 第38条の2~4)
  • 労働時間・休憩・休日規定の適用除外(労働基準法 第41条)
  • 特例措置対象事業場(労働基準法 第131条)
最低賃金
  • 地域別最低賃金:全国加重平均 1,121円(2025年/令和7年度10月改定値)
  • 特定最低賃金:特定の産業(製造業等)では、地域別より高い金額が設定される場合があります。
割増賃金
(残業代等)

通常の25%増(1.25倍):

  • 1日8時間または週40時間を超える労働(法定時間外労働)
  • 22:00〜翌5:00の間に勤務した場合(深夜手当)
    例:東京都의 最低賃金労働者の場合、1時間あたり約1,533円〜

通常の35%増(1.35倍):

  • 法定休日(週1日または4週4日の休日)に労働させた場合

通常の50%増以上(1.5倍以上):

  • 月間60時間を超える時間外労働(全企業共通)
  • 時間外労働が深夜(22時以降)に及んだ場合(25% + 25% = 50%)
    例:東京都の最低賃金労働者の場合、1時間あたり約1,839円〜
休憩時間
  • 1日の労働時間が6時間を超える場合:45分以上
  • 1日の労働時間が8時間を超える場合:1時間以上

※休憩時間は無給・途中付与

採用・就業・解雇の法律とは?

日本の労働法制度では、労働者の保護を目的とした厳格なルールを定めています。

採用時は、トラブルを未然に防ぎ、労働者の権利を守るために、労働条件の明示が雇用主の義務となります。具体的には、賃金や労働時間、仕事内容、契約期間、将来的な「就業場所や従事する業務の変更範囲」を明示することも必須となっています。原則として書面(本人の希望があればデジタルも可)で交付しなければなりません。

選考過程においては「差別の禁止」「公正な採用選考」が強く求められます。労働基準法では国籍、信条、社会的身分による差別を禁じており、男女雇用機会均等法では性別を理由とした差別や募集時における性別限定を禁止しています。直接的な差別だけでなく、合理的な理由なく「身長・体重・筋力」を要件にしたり、「転居を伴う転勤」を条件にしたりすることで、実質的にどちらかの性別を排除することを禁止しています。

雇用主は、応募者の適性と能力のみに基づいた客観的な判断を行うことが、職業安定法に義務付けられています。選考とは関係のない個人情報(家族構成、思想、信条、出生地など)の収集は原則として認められていません。

職場における就業環境の維持は、単なる労働時間の管理に留まらず、労働者が心身ともに健康を損なうことなく働ける基盤作りが求められます。

  • 心身の健康と安全の確保:事業者は、物理的な作業環境の整備はもちろん、心身の健康を確保する義務を負います。労働安全衛生法に基づき、ストレスチェックの実施や長時間労働者への面接指導など、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための措置も含みます。
  • ハラスメント防止措置義務:ハラスメント対策も安全配慮義務の重要な一環となっています。労働施策総合推進法(パワハラ防止法)男女雇用機会均等法育児・介護休業法に基づき、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、および妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するための相談窓口設置や再発防止策を講じることは、すべての企業において法的義務です。

日本は諸外国に比べ、解雇に関するハードルが非常に高く設定されており、手続きと正当な理由が不可欠です。

  • 解雇は「客観的に合理的な理由」があり、かつ「社会通念上相当」(一般常識からみて妥当であること)と認められない限り、権利の濫用として無効となります。
  • 解雇する場合は、少なくとも30日前に予告しなければなりません。または、予告しない・日数が足りない場合は、30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。

日本地図

勤怠管理に関する法律は?

勤怠管理は単に「出欠勤や時間を記録する」だけではなく、複数の法律に基づいた適切な運用が求められます。特に管理者が意識すべき4つの柱は以下の通りです。

  • 労働時間や休暇日数の法律:「何時間働けるか」「休みは何日か」は労働基準法に定められています。残業が36協定の範囲内で行われているか、有給休暇が年5日以上取得されているかなど、法定基準の遵守が求められます。
  • 労働時間の記録を義務付ける法律労働安全衛生法は「健康を守るために時間を正しく測れ」と記録のルールを定めた法律です。自己申告だけに頼らず、PCログやタイムカードによる客観的な労働時間の把握を義務付けています。
  • 契約・安全の法律労働契約法は会社と従業員の「約束事」を守るための法律です。過度な労働による健康被害を防ぐ安全配慮義務や、不当な解雇、合意のない労働条件の不利益変更を禁じています。
  • プライバシーの法律個人情報保護法は「監視と情報の取り扱い」に関する法律です。PCログの取得やメールのチェックを行う場合、あらかじめ利用目的を就業規則等への記載し、正当な範囲で運用する義務があります。

給料の支払いに関する法律とは?

最低賃金はいくら?

最低賃金制度は、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者はその金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。仮に労使合意の上で最低賃金額より低い賃金を定めても、それは法律により無効とされ、最低賃金額と同じ金額とみなされます。

最低賃金には以下の2種類があり、両方が適用される場合は、高い方の金額を支払う義務があります。

  • 地域別最低賃金:都道府県ごとに定められ、産業や職種を問わず、その地域で働くすべての労働者に適用されます。2025年10月改定の全国加重平均は1,121円です。厚生労働省発表の地域別一覧によると東京では1,226円、大阪では1,177円、愛知では1,140円、福岡では1,057円です(2025年/令和7年10月時点)。
  • 特定最低賃金:特定の地域内の、特定の産業(製造業、鉄鋼業など)に従事する基幹的労働者に適用されます。厚生労働省発表の都道府県別に設定されている特定最低賃金の一覧で確認できます。

最低賃金は雇用形態(正社員、パート、アルバイト等)にかかわらず、すべての労働者に適用されます。注意として、派遣労働者は派遣元の事業所の所在地にかかわらず、派遣先の地域の最低賃金が保障されます。

最低賃金の対象は、「毎月支払われる基本的な賃金」のみが対象となります。賞与および臨時で支払われる賃金、割増賃金(残業代や休日手当)、通勤手当などは計算に入れません。

最低賃金額以上の賃金を支払わない場合、以下の罰則が科せられる可能性があります。

給料の支払期日は?

給与の支払期日について、企業が遵守すべき義務は以下のとおりです。

  • 支払期日が休日に重なった場合、支払日を前倒しするか、後ろ倒しにするかは、会社の裁量に委ねられています。ただし、労働基準法24条「期日払いの原則」に基づき、就業規則に「休日の場合はその前(または後)の日に支払う」旨をあらかじめ明記しておくことが義務付けられています。
  • 労働者が、出産、疾病、災害、結婚、死亡、およびやむを得ない事由により1週間以上帰郷する場合などの「非常事態」で費用が必要になった際、労働者がすでに働いた分に対する賃金を、本来の支払日前であっても会社は支払う義務があります。
  • 労働者が退職または死亡した場合、権利者(本人や遺族)から請求があったときは、会社は7日以内に未払賃金を支払い、積立金や保険証等の権利に係る備品等を返還しなければなりません。
  • 賃金請求権の時効は、本来5年ですが、経過措置として当分の間は3年とされています。

賃金支払に関する法律違反は、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。また、悪質な未払いや遅延に対しては、労働基準監督署による是正勧告や企業名の公表が行われる場合があります。

残業代に関する法律とは?

1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた場合、会社は労働基準法第37条に基づき残業代「割増賃金」を支払う義務があります。

労働の種類 割増率 備考
時間外労働 25%以上 1日8時間、週40時間を超えた労働
休日労働 35%以上 法定休日(週1日の休み)の労働
深夜労働 25%以上 22:00〜翌朝5:00の間の労働
月60時間超の時間外 50%以上 中小企業を含む全企業が対象

残業の種類が重複する場合の計算は、割増率が合算されます。例えば、残業が深夜に及んだ場合は、以下のとおりです。

  • 時間外(25%) + 深夜(25%) = 50%
  • 休日(35%) + 深夜(25%) = 60%

会社は、適正な割増賃金の支払いや36協定の遵守を確認するため、労働安全衛生法に基づきタイムカードやPCログ等の客観的な記録を用いて労働時間を把握する義務を負います。

労働法の休憩時間とは?

労働者の疲労回復と健康確保のため、労働基準法では休憩についての基準を設けています。労働時間6時間を超えない場合は休憩時間は不要ですが、6時間を1分でも超えると、以下の休憩を労働時間の途中のタイミングで与える義務があります。

1日の労働時間 最低限必要な休憩時間
6時間超 〜 8時間以下 45分以上
8時間超 1時間以上
  • 休憩時間のタイミング:休憩は「途中付与の原則」により労働時間の途中に与えなければなりません。業務終了後に休憩を与えて「早く帰す」ことは法違反です。
  • 休憩を全従業員に一斉に与える:「一斉付与の原則」が休憩の三原則の一つです。ただし、労使協定の締結や特定の業種(接客業・運輸業等)では交代制が認められます。
  • 休憩時間は自由に利用できる:「自由利用の原則」により業務から完全に解放されます。電話当番や来客待機(手待時間)は労働時間とみなされます。

労働法で定められている休日は?

原則として、以下のいずれかの休日を与える義務があります。

  • 原則:毎週少なくとも1日(法定休日)
  • 例外(変形休日制):4週間を通じて4日以上。※就業規則に「起算日」の明記が必要です。

法律上の義務(法定休日)は「週1回」ですが、1日8時間労働の場合、週5日で40時間に達することから「週40時間労働制」を守るため多くの企業が「週休2日」を採用しています。

36協定に「休日労働」の定めがない限り、法定休日に働かせることはできません。

  • 法定休日の労働:35%以上の割増賃金が発生。
  • 法定外休日(所定休日)の労働:週40時間を超える場合は25%以上の割増賃金が発生。

法律で定められている休暇とは?

休暇制度には「労働基準法」や「育児・介護休業法」などに基づくものがあります。

  • 年次有給休暇:6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に、年10日〜最大20日(勤続年数による)の有給休暇を付与することが労働基準法第39条に定められています。年10日以上の有給が付与される労働者に対し、会社は年5日を確実に消化させる義務があります(時季指定権)。
  • 介護休業:対象家族1人につき通算93日(分割可)まで取得できます。育児・介護休業法第11条に定められた無給の休暇です(雇用保険より給付金あり)。
  • 介護休暇:短期的なケアのため、家族1人の場合年5日(2人以上なら10日)まで、育児・介護休業法第16条の5で定められた休暇です。有給・無給は会社規定によります。
  • 産前産後休業:産前6週(双子や三つ子の場合は14週)・産後8週間の休みが労働基準法の第65条で定められています。無給の休暇です(健保より手当あり)。
  • 母性健康管理のための休暇:母性健康管理措置に基づく通院休暇は、妊娠中や産後1年以内の女性労働者が、定期健康診査や保健指導を受けるために必要な時間を確保することが男女雇用機会均等法第12・13条に定められています。医師や助産師の指導に基づき事業主は休暇を与え、通院を理由とする不利益な扱いは禁止されています。有給・無給は会社の就業規則によります。
  • 育児休業:原則として子が1歳(最大2歳)に達するまで最大1年間、2回までで分割取得が可能です。育児・介護休業法第5条に定められ、男女問わず対象です。無給休暇ですが、雇用保険に加入していれば、一定の要件を満たすことで国から育児休業給付金が原則1歳未満の子の養育期間に支給されます。
  • 産後パパ育休:出生時育児休業は子の出生後8週間以内に取得できる主に男性向けの制度です。育児・介護休業法第9条の2に定められおり、最大4週間(28日)、2回まで分割取得が認められています。無給ですが雇用保険の加入者には出生時育児休業給付金が支給されます。
  • 子の看護休暇:小学3年生までの子を養育する全労働者が、子どもの看病・けがの看護や通院、学校行事、感染症に伴う学級閉鎖などのために、1年間に5日(2人以上の場合は10日)まで取得できる無給の休暇制度です。育児・介護休業法の第16条の5に定められており、時間単位での取得が可能で、原則として繁忙期でも会社側は取得の拒否や日程の変更を命じられません。
  • 生理休暇:生理で就業が著しく困難な場合に、取得できる休暇です。労働基準法 第68条に定められており、診断書の提出は不要で日数制限はありません。無給・有給は会社の就業規則によります。
  • 投票や裁判員などの職務:公民権行使の保障は、労働者が勤務時間中に投票や公の職務(裁判員・証人としての職務など)を行うために必要な時間を請求した場合、雇用主は請求された時間は原則として認める必要がある制度です。労働基準法第7条に基づき、雇用形態にかかわらず適用されます。

:「夏季休暇」や「慶弔休暇」は法律上の義務がない法定外休暇(特別休暇)です。制度の有無は会社の自由で、日数の違い、有給・無給についても就業規則に基づきます。

国民の祝日は?

国民の祝日に関する法律」で定められた祝日は1年間で16日あります。2026年の一覧は以下のとおりです。

日本の国民の祝日 日付(2026年)
元日 1月1日(木)
成人の日 1月12日(月)
建国記念の日 2月11日(水)
天皇誕生日 2月23日(月)
春分の日 3月20日(金)
昭和の日 4月29日(水)
憲法記念日 5月3日(土)
みどりの日 5月4日(日)
こどもの日 5月5日(月)
休日 5月6日(火)祝日法第3条第2項による休日
海の日 7月20日(月)
山の日 8月11日(火)
敬老の日 9月21日(月)
休日 9月22日(火)祝日法第3条第3項による休日
秋分の日 9月23日(水)
スポーツの日 10月12日(月)
文化の日 11月3日(火)
勤労感謝の日 11月23日(月)

出典:令和8年(2026年)の国民の祝日・休日

※「国民の祝日」が日曜日に当たる場合は、その祝日の後の最も近い平日が「振替休日」となります。前日と翌日の両方を「国民の祝日」に挟まれた平日は休日となります。

年少者に関する保護規定とは?

就労可能な最低年齢は?

日本では、労働基準法により、年少者の健全な育成を目的とした厳格な保護規定が設けられています。義務教育期間中の児童を労働者として雇用することは、原則として禁止されています。

  • 中学校を卒業した後の4月1日から就労可能:原則、満15歳に達した日以後の最初の3月31日(義務教育を修了)を経過するまでは雇用できません。
  • 例外の職種:満13歳以上の児童については、映画の製作・演劇の子役、新聞配達などの「非工業的業種」に限り、労働基準監督署長の許可を得て、修学時間外に働かせることができます(満13歳未満は映画・演劇のみ可)。

18歳未満の就業制限は?

18歳未満の「年少者」を雇用する場合、成人(18歳以上)とは異なる以下の制限を遵守する義務があります。

  • 深夜業の禁止:原則として、22:00~翌5:00の間は働かせてはなりません。
  • 残業・休日の制限:1日8時間・週40時間の「法定労働時間」を厳守させる必要があります。36協定による残業は認められません。
  • 危険有害業務の禁止:機械の掃除、重量物の取り扱い、有害ガスを浴びる場所など、危険な業務への従事は禁止されています。

18歳未満を雇い入れる際、企業には年齢を確認するための事務的な義務が課されます。

  • 義務内容:18歳未満の者を雇う場合、事業場に「年齢を証明する戸籍証明書(住民票記載事項証明書など)」を備え付けておく必要があります。
  • 児童(中学生以下)の場合:上記に加え、学校長の証明書および親権者の同意書も必要となります。

2025年〜2026年の労働法改正と最新状況

1. 最低賃金の引き上げと目標値の更新

2. 育児・介護休業法の改正

  • 子の看護休暇の拡充2025年4月の施行により、対象となる子の範囲が「小学校就学前」から「小学校3年生修了時」まで拡大されました。また、取得理由も「行事参加」等へ緩和され、仕事と育児の両立支援が一段と強化されています。

3. 育休取得状況の公表義務化

  • 対象企業の拡大:2025年4月より、従業員数100人超の企業に対しても「男性の育休取得率等」の公表が義務付けられています。従来の「1,000人超」から対象が大幅に拡大されたことで、多くの中小企業においても情報公開が一般的となりました。

4. 裁量労働制の導入要件

  • 本人同意と健康確保:2024年の改正で義務化された「本人同意」と「撤回手続き」ですが、2026年現在は労働基準監督署による調査において最も厳しくチェックされる項目となっています。単に同意書があるかだけでなく、「本人が真に自由な意思で同意しているか」「不利益な取り扱いを恐れて同意を強要されていないか」というプロセスが精査されます。
  • 撤回については、同意を撤回した労働者に対し、評価の引き下げや嫌がらせ(不利益取り扱い)が行われていないか、撤回後の業務指示が適切か(裁量を奪いすぎていないか)が焦点となっています。

5. 勤務間インターバル制度の導入促進・助成金

  • 努力義務の強化:勤務間インターバル制度は、終業から翌日の始業までに一定の休息時間を設ける仕組みで、「働き方改革関連法」に基づき2019年より全企業で努力義務化されました。政府の「過労死等防止対策大綱」が掲げる目標に向け、支援策「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」等の活用が推奨されており、勤怠管理システムの刷新や就業規則の改訂にかかる費用の大部分が補助されるなど、導入事例が増加しています。
  • 罰則のない努力義務ではありますが、適切な休息の欠如による健康被害は企業の法的・経営的リスクに直結するため、助成金を活用したITツールの導入など、実質的な義務化を見据えた体制整備が加速しています。2026年度は、勤怠管理システムの刷新や就業規則の改訂費用の補助に加え、人手不足に悩む中小企業向けに「コンサルティング支援」や「自動チェック機能の実装」への優遇措置が強化されています。

6. 労働条件明示ルールの変更

  • 就業場所・業務の変更範囲:2024年4月より、全ての労働契約の締結・更新時に「将来的な配置転換や勤務地の変更範囲」を明示することが義務化されました。現在は契約書や募集要項において、「聞いていなかった転勤」によるトラブルを避けるため明文化する運用が標準化されています。
  • 「業務の都合により変更する場合がある」といった曖昧な表現ではなく、「将来的に想定される全ての部署・拠点」を網羅的に記載する運用が定着しました。労働基準監督署の調査では、記載漏れの拠点へ転勤を命じた際のトラブル事例などが精査の対象となっています。

7. デジタル給与払いの普及

  • キャッシュレス支払いの本格運用:2024年の指定資金移動業者の決定以降、デジタル給与の運用事例が広がり、2026年現在では計4社(PayPay、リクルートMUFGビジネス等)が指定資金移動業者として認定されています。導入にあたっては「労働者の自由な意思による同意」と「労使協定の締結」が必要であり、透明性の高い運用が求められています。

8. 障害者雇用率の段階的引き上げ(2026年7月改定)

  • 法定雇用率のさらなる改定:2024年4月の2.5%への引き上げに続き、2026年7月より「2.7%」へと段階的な引き上げが行われます。各企業では、目前に迫った新基準達成に向けた採用計画の策定と、定着支援の強化が急務となっています。:従業員数37.5人〜40人未満の中小企業は、これまで義務がありませんでしたが、2026年7月からは「1名以上」の障害者雇用が必要となります。
時期 法定雇用率 雇用義務が発生する企業規模
〜2026年6月 2.5% 従業員40.0人以上
2026年7月〜 2.7% 従業員37.5人以上
  • 未達成時のペナルティと「企業名公表」のリスク
    法定雇用率を達成できない場合、不足1人につき障害者雇用納付金(従業員100人超の企業)月額5万円の納付義務が生じます。雇用状況が著しく悪い企業には、企業名公表(全対象企業)やハローワークから「雇入れ計画」の作成命令が出されます。

免責事項

本記事の内容は情報提供のみを目的としています。掲載情報の正確性には万全を期していますが、誤りや欠落がないことを保証するものではありません。重要な情報については、必ずご自身で別途ご確認のうえ、本記事の内容のみに依拠しないようにしてください。