時間泥棒とは?どうすれば不正を防止できるのか?

Written by Asim Qureshi
著者 Asim Qureshi, Jibble CEO

職場での窃盗は、多くの人が思っている以上に一般的です。Business.comが2025年に実施した「職場における時間泥棒の現状」に関する調査によると、調査対象となった1,000人のアメリカ人労働者のうち67%が、現在の職場で何らかの盗みをおこなったことがあると認めています。

これは、オフィス用品や機器などの物理的なモノを持ち出すことだけに限られません。従業員が盗む中で、貴重な資源の一つは「時間」です。

時間泥棒を理解し、対処することは、企業が職場における公平性、効率性、そして信頼を維持するために極めて重要です。本記事では、時間泥棒とは何か、どのような形で起こるのか、そして企業がそれを防ぐために取るべき実践的な対策について解説します。

それでは、見ていきましょう。

この記事の内容:

A hand with a wristwatch working on a laptop.

画像出典:Brad Neathery on Unsplash

時間泥棒とは?

時間泥棒とは、従業員が実際には働いていない時間に対して給与を受け取ることを指します。これは故意の場合もあれば、うっかりミスの場合もありますが、いずれにせよ積み重なることで企業に損害を与えます。

時間泥棒にはさまざまな形があります。たとえば、他人の代わりに打刻する「代理打刻」、休憩時間を超過すること、意図的にゆっくり作業すること、業務時間の私的利用などです。この目に見えない損失は、生産性に影響を与え、労働コストを増加させます。

時間泥棒に対する罰則は?

時間泥棒に対する罰則は、その重大さによって異なります。従業員が一度や二度、退勤の打刻を忘れるくらいは、単なるうっかりミスとして扱われることが一般的です。

しかし、故意に繰り返し時間の不正申告をしたり、大規模な時間泥棒を行った場合は、より厳しい罰則が科される可能性があります。Morgan & Morganの雇用法に関する記事によると、1,000ドル以上の時間泥棒は重罪と見なされる可能性があり、重い罰金や最長10年の懲役刑に至ることもあります。

法的な結果に加えて、時間泥棒は解雇の理由にもなります。実際に、時間泥棒が疑われて解雇された従業員もいます。

時間泥棒に関する法的影響をより深く理解するために、以下の事例を見てみましょう。

  • 従業員が50時間以上の説明不能な時間記録に対し、2,000ドル以上を雇用主に返還

Reach社とBesse氏の判例では、カナダのブリティッシュコロンビア州の民事調停裁判所が、従業員による不当解雇の主張を却下し、代わりに雇用主に損害賠償を認めました。

Reach CPA社でリモートワークをしていた会計士のBesse氏は、時間記録ソフトの作業内容データと一致しない50時間以上の勤務時間を申告していたことが判明しました。指摘された後も不一致の説明ができず、正当な理由により解雇されました。

この従業員は、不当解雇、未払い賃金、退職金として5,000ドルを請求しましたが、雇用主は時間泥棒による賃金約1,500ドルと、在宅勤務用機器の前払い費用1,000ドルを反訴しました。

裁判所は、時間泥棒は重大な不正行為であり、特にリモートワークでは信頼が重要であると判断し、Besse氏に対して労働していない時間の賃金と前払い費用の返還を命じました。

その合計は、未就労時間分の賃金約1,500ドルと、自宅勤務用機器の前払い費用約1,000ドル、利息と手数料を含めて約2,750ドルとなりました。

事例からの学び

  1. 時間泥棒は雇用関係を損ないます。特に監督が限られるリモートワーク環境では深刻です。職場の規則に違反した場合、時間泥棒は解雇の理由になり得ます
  2. 時間記録ソフトは時間泥棒の証拠となり得ますが、プライバシーに関する法令や職場の方針に準拠して使用する必要があります。
  3. 電子的監視に関する透明性のある方針は、雇用主自身を法的に守るのに役立ち、特にリモートワークにおいて勤務時間記録は公正な管理を支援します。

時間泥棒を見抜くには?

時間泥棒を見抜くには、従業員の勤務パターンやデータに注意深く目を向けることが重要です。効果的な方法のひとつは、従業員が申告した時間と実際の生産性を比較することです。たとえば、完了した作業内容や対応した顧客の数が申告された勤務時間に対して著しく少ない場合、時間泥棒の兆候かもしれません。

人事分析ツールや時間記録ソフトを活用することで、個人やチーム全体の異常なパターンを特定しやすくなります。

さらに、出勤・退勤の打刻時間とセキュリティカメラの映像や入退室ログを照合することで、申告された時間に従業員が実際にいたかどうかを確認できます。

もしあなたの職場は時間泥棒の心配はないと思っていても、時間と生産性のデータを分析することで、問題が大きくなる前に隠れた課題を発見できます。

時間泥棒を防ぐ効果的な方法とは?

1. 明確な目標と期待を設定する

従業員が何を期待されているかを正確に理解し、明確な期限があることで、集中力が高まり、時間の浪費が減少します。目標が明確であれば、全員が責任を持ち、時間泥棒の機会も減ります。

これらの期待値は文書化し、定期的に伝達し、測定可能な成果に結びつけましょう。定期的なチェックインや進捗報告も、全員が会社の優先事項に沿って行動できるようにするために有効です。

2. 自動化された時間記録ツールを使用する

代理打刻、勤務時間の改ざん、打刻忘れなど、旧式の方法に頼ると時間泥棒や給与計算のミスが発生しやすくなります。そこで、自動化された時間記録ソフトの出番です。正確な出退勤の打刻を保証し、チーム全体の責任感を維持するのに役立ちます。

時間記録ツールならなんでも良い、というわけにはいきません。勤怠を管理するシステムを選ぶ際には、悪用を防ぎ、職場の透明性を高める機能が備わっているかをチェックしましょう。

確認するべき機能

  • 生体認証:顔認証や指紋認証などにより、代理打刻を排除し、正しい人物が打刻していることを保証。
  • GPS追跡:打刻時の従業員の位置情報を確認。特にリモートチームや現場作業員に有効。
  • リアルタイムのアラート機能:打刻漏れ、遅刻、不規則な打刻をフラグ付けし、管理者が迅速に対応できる。
  • 監査ログとレポートツール:コンプライアンスとレビューのために明確で改ざん不可能な時間記録を提供。

適切なソリューションへの投資は、企業を守るだけでなく、チーム全体の生産性と責任感を高めます。

3. 時間だけでなく生産性を監視する

40時間働いても成果がほとんどない場合、誰にとっても利益にはなりません。だからこそ、労働時間だけでなく、何が達成されたかを確認することが重要です。

従業員の成果と記録された時間を比較することで、見逃されがちな不一致を発見できます。たとえば、毎回フルシフトを記録しているのに、締切を守れなかったり成果が少ない場合は、時間管理の課題や意図的な操作の可能性があります。

これを効果的に行うには、プロジェクト管理機能や生産性監視機能を備えた時間記録システムの使用を検討しましょう。これにより、以下のことが可能になります。

  • 勤務時間中にスクリーンショットを取得し、作業がどのように行われているかを視覚的に把握できる。
  • 勤務時間中に使用されているツールやプラットフォームを監視し、注意散漫や時間の不正使用を特定できる。
  • 時間記録を特定のプロジェクトや成果物に分類し結びつけることで、実際の成果に基づいて生産性を評価しやすくなる。

従業員の成果と勤務時間を並行して記録することで、時間泥棒の兆候を示す可能性のある不一致を発見できます。記録された時間と作業内容や成果が一致しない場合は、調査すべき理由になります。

4. 不要な休憩や会議を制限する

従業員が定期的で健全な休憩を取ることは、集中力を維持し、燃え尽きを防ぐために不可欠ですが、回復のための休憩と過度なダウンタイムには微妙な違いがあります。長時間または頻繁な予定外の休憩は、生産性を低下させ、従業員の意欲を削ぐ可能性があります。

適切なバランスを取るためには、休憩時間に関する明確なガイドラインを設定しましょう。短く意図的な休憩を推奨することで、作業の流れを妨げることなく従業員がリフレッシュできるようになります。スケジュールされた休憩リマインダーや生産性タイマーなどのツールは、構造化された効率的な休息時間を促進するのに役立ちます。

同様に、会議は明確な目的を持つべきであり、時間とエネルギーの浪費になってはいけません。構造化されていない、または頻繁すぎる会議は、勤務時間の大部分を消費してしまう可能性があります。会議が過度に長くならないようにするには、明確な議題を設定し、必要な参加者のみを招待し、不要な会議はメールやメッセージツールによる手短な更新に置き換えましょう。

5. 従業員の士気と自発的な貢献意欲を高める

従業員が評価され、信頼され、意欲を持っていると感じている場合、時間泥棒に手を染める可能性は大幅に低くなります。自発的な貢献意欲が低いチームは、時計ばかり気にしたり、手を抜いたり、勤務中に上の空になる傾向があります。

このリスクを減らすには、前向きで協力的な職場文化の構築に注力しましょう。優れた成果を認め、報酬を与え、成長の機会を提供し、従業員のフィードバックに耳を傾けることが重要です。

最終的には、自発的な貢献意欲の高い従業員は自らの仕事に積極的に深く関わり、実働時間に対してもより責任を持つようになります。

職場での時間泥棒を防ぐ準備は整っていますか?

時間泥棒は、企業が見過ごすべき問題ではありません。数分程度の損失は一見無害に思えるかもしれませんが、時間が経つにつれて、大きな生産性の低下や財務的損失につながる可能性があります。明確な方針、透明性のあるコミュニケーション、そして適切な時間記録ツールを活用することで、時間泥棒が深刻化する前に防止することができます。

今すぐ積極的な対策を講じることで、より責任感のある職場環境を築き、利益を守り、勤務時間の一分一秒すべてが、ビジネスの前進に貢献するようになります